ビジネスパーソンのみなさま、こんにちは。経営企画ガチ勢のもいもいです。
本日は企業ごと、部門間、もしくは社員個々人の間で論争巻き起こる「Excelファイルの別ファイルへのリンク参照を多用すべきか否か」についてお話します。
※リンク編集って何?というかたはこちらの記事をご覧ください
参考URL:https://muracolumn.com/excel作業効率化│リンク編集で出来ること/
私もこれまで複数の企業、部署にて職務を遂行してきましたが、この論点はそれぞれが強い意見を持つ終わりなき論争を巻き起こしておりました。
かくいう私も両者の側にも立っていた歴史もあり、お互いが主張する意見に非常に共感を持っております。
しかしこのIT化、時代とともに複雑化するオペレーショナルなタスク、高度な分析を必要とするビジネスの世界において、
私は確固たる信念を持ち、この先に待ち受けるキャリアストーリーをリンク編集多用派として生きていきたいとここに宣言します。
まずは両派閥の見解をここに整理し、私の持論を展開したいと思います。
リンク参照多用NG派の見解
「まずは整理」と言いつついきなり持論展開をいたしますが、このNG派は「Excelエキスパード(超上級者)、もしくは初~中級者」に多く存在すると思っています。
私がまだビジネスの世界に立ってすぐの頃に大変お世話になった某有名戦略コンサル上司は、紛れもなく世界トップクラスのExcelエキスパードでした。
彼は海外有名大学からグローバルエリートの集うこの企業に入りすぐ、大きな挫折を経験したとのことです。
それは入社直後、グローバルの各拠点から集められたジュニアレイヤーの合宿にて、各国バラバラに組まれた5人程度のグループで過ごした3日程度の出来事。
留学経験もなく学校と独学で身に付けたカタコトの英語でのやり取りもそれなりの悔しさを感じたそうですが、最も強烈な衝撃を与え、彼のその後のビジネスキャリアをExcelモンスターとしての存在に変えたのは緊張感もほどけるワーク終了後の就寝前、5人1部屋でのささいなやり取りだったそうです。
そのやり取りの内容はそう、「Excel好きな機能を挙げ合うマウント取りゲーム」。
グローバルエリートと言えど入社1年目のジュニア。実務経験もほとんどなく先輩の後を追っているだけの彼ら。
多様な人種と慣れない英語での会話に弱気になっていたものの、彼らとの差はそれでしかない。
そう思っていた私の元上司はExcelの存在はもちろん知っていたし、学生時代の研究室では最も使いこなしていたと自負していたそうです。
そんな彼が多民族多国家の彼らとの議論で圧倒的敗北を喫したことを十数年後、フレッシュな私に苦虫を噛んだような表情で語ってくれました。
「機能に好きって何?」、「2,3周回るほどの機能など知らない」、「1度負けた後、私を除いた4人で延々と酒飲みながら楽しそうに何周もしている」
その様子を見て彼は圧倒的敗北感を感じたとのことです。
ワークを通じて知識・知能は負けず劣らず、存在するのは言語の壁だけと思っていた彼は「何てことのないツールの一つ」と思っていたExcelが「知識・知能を表現する最大のツール」であることに自分だけ気が付いていなかった。
そして「そのツールを使いこなす能力がない」ということは、自負していた知識・知能がただの自己満足で、誰かから評価を得られる機会創出すら満足に出来ないということに気が付いたそうです。
それくらいのことでそんなこと思う?何を大げさに若者に語ってるの?
その時私はわずかに思いましたが、シニアレイヤーの中でも頭一つ抜けた貢献力を持つ彼の姿を見ているので、これが「本物か・・・」となりました。
そんな彼はリンク参照NG派です。
前置きが長くなりましたが、そんな方でもNG派は多くいらっしゃいます。
Excelを毎日触る初~中級者の方にも当然多くいらっしゃいます。
その理由は共通してます。
- どこが何を参照してるか分からない
- リンクの更新が面倒
- 更新忘れで古いバージョンのファイルをリンクしている恐れがある
- 計算式が分かりづらい(ファイル名が表示されるのでセル内の式が長い)
- 複数ファイルを同時に開くのが手間、PCがフリーズする
特にExcel初心者の方はリンク参照が何なのかすら分からない。分かっていたとしても機能やショートカットキー等を使いこなせず、大変な苦労をしているといった声も聞きます。
これらももっともなご意見だと思います。
リンク参照多用OK派の見解
一方で、リンク参照OK派の方々とはどんな方で、どのような見解をお持ちでしょうか。
私が見てきた限りで、OK派である方は「Excel中~上級者」層に存在していると思います。
これはNG派の意見である「リンク参照」の課題を何かしらの手法で部分的なりともクリアしているから、そしてリンク参照という機能を使いこなしている層ですから当然と言えば当然といったところでしょうか。
これは私が経験した3社目の企業でのことです。
その企業は全体的に非常にビジネススキルの高い人材が豊富であると有名で、その企業出身者もしくは在籍者が書き下ろしたビジネス書やハウツー本が多数流通しております。
企業文化的にも独特、かつビジネス成長に向けた理にかなった思想が根付いており、そのビジョンや人材育成に多くの注目が集まっており転職市場で引く手あまたのブランドを持つ集団でした。
この企業に入り込み驚いたのはほぼ全員がビジネスツールを駆使する猛者である、というところもありますが何よりも部門を問わずあたりまえのように全員がリンク参照を多用していることでした。
もっと言うと値貼付された箇所を見ると怒り出す集団でした。
私は当時、リンク編集多用NG派でしたので合わせるのに必死になりました。そしてこの経験が私をOK派に変えるきっかけとなったのです。
彼らがリンク参照を多用する理由は以下です。
- アウトプットを作り出すための関連ファイルはすべてリンクで連携したい(情報集約)
- 1ファイル1機能にする・多目的なsheet構造にしない(機能統一)
- 大量のsheetが存在するファイルは読解困難・見る人を意識していない(閲覧性)
- 情報や試算値の根拠(ロジック)が必ず分かるようにしておく・値貼付では分からないorメモでの記載は読解で齟齬が生じる(根拠提示・齟齬防止)
- 情報更新をリンク更新で一括対応が可能(作業効率化)
利用意図はごもっともだと思います。
そしてたしかにこれらにより緻密な計算が高頻度で更新される高速PDCAが実現されていました。
どの報告、判断にも定量化された根拠・説明がなされており、それを支える高濃度のスプレッドシート群が理路整然と各所共有されていました。
様々なメリットを目の当たりにしたわけですが、しかしこれだけではNG派による見解であるやらない理由(課題)を解決していません。
メリット>デメリットという単純な図式ではなく、彼らがこれらを実現可能としてきたにはデメリットを最小限にすることが出来ていたからです。
このデメリット最小化が今回の話のポイントです。
努力によりデメリットを減らせるのであれば、ビジネスの世界ではやらない手はない。
そしてそのHowは決して解決困難なものではなく、個々人の意識次第であるということに気が付き、私はOK派へと手のひら返しをいたしました。
リンク参照多用を可能にするデメリット最小化
それではその企業がリンク編集多用出来ていた理由は何だったのでしょうか。
それは一言でいうとExcelスキルが全員高かったから、です。(笑)
さらに踏み込んで言うと、Excelスキルを全員高めようとする自己向上意識の極めて高い集団であったからです。
それを可能にするのは採用時点から始まり、この企業は世界水準のエリートになりたいという欲求を持つ人材を採用方針としています。
そして実際に入社してみると周りには意識・欲求の強い人達しかいません。
ハイレイヤーになればなるほどその欲求は強く、生半可な仕事をした時にはこのご時世ではびっくりするほどの指摘を全方位から同時に受けます。
元々意欲の高い人材が、さらに高いハイレイヤーからの視座を落とし込まれ、より意欲の高い集団形成がされるという循環がそこにはありました。
迅速な業務スピードと高品質な成果物が日々要求される中で、自然とビジネススキルを向上させていき、当然のように作業ツールであるExcelスキルも高度化していくというわけです。
この状態であれば、NG派の意見で出た「やらない理由」はどんどん淘汰されていくのも理解できます。
- どこが何を参照してるか分からない([Ctrl+「]や[Alt+M+P]を多用し参照式をどんどん辿っていく)
- リンクの更新が面倒([クイックアクセスツールバーでリンクの編集]→[Alt+U or N or O等]で更新・変更)
- 更新忘れで古いバージョンのファイルをリンクしている恐れがある(情報連携が万全・数値感覚を持っている・バージョン管理が整えて防止)
- 計算式が分かりづらい(ファイル名が表示されるのでセル内の式が長い)│(ファイル名の統一・ファイルを複数開きパス表示しない等で気にならない)
- 複数ファイルを同時に開くのが手間、PCがフリーズする(通信環境・PCスペックで改善)
最後のPCがフリーズするはインフラに依存しますが、この企業では「インフラ・機器性能が優れている現代でこの点を気にすること自体がおかしい」という前提が共通認識として存在していました。
そのため時にPCがフリーズしたり通信環境が不安定に感じた時には各々すぐに、それなりの温度感で担当部署に文句を言いに行っていました(笑)。
もちろん時には解決できないインフラ的課題にあたり、改善できないことも生じます。
そういう時はやむを得ないですが、その前にインフラ課題に直面する限界をある程度認識したうえで、可能な限りのインフラ環境を使いこなす感覚を持って、技術を使い切ろうとしています。
リンク参照で多少のファイルを同時に開くくらいでは気になるレベルではない。気になるレベルになればショートカットでファイルを手動計算に切り替え、必要タイミングでF9で再計算を回す。それでも作業が停滞してしまうようであれば不要ファイルを見極めて閉じていく。
このようにして環境や機能をフル活用することで、リンク参照多用を可能としているのです。
そして全員がこれらを可能だという前提で仕事をしているため、作成者もその前提でファイルや参照式を作りこみ、閲覧者もその前提で情報根拠を即座に辿っていき理解を深めます。
こうなってしまえばやらない理由はないと私は思い、次の会社にそのマインドを持ち帰ったのでした。
最後に
かくして私はリンク参照多用派として、NG派も混在する組織に戻っていきました。
多様な価値観を尊重するこの組織において、私は意見を押し付けるというようなことはしたくなかった。
しかしことこのリンク参照については、既存のファイルのバックアップを取り、勝手に整理し、リンク参照多用ファイルへと変貌させ、既存ファイル管理者に見せてはその有用性を説いていきました。
当然その反応はネガティブなものでした。
そこで私は嬉々としてExcel機能や作業効率化方法論を伝授し、「こうするともしかしたら良いかもしれませんね」という配慮しているのかしていないのか微妙な口調で持論展開し、一人一人と向き合いリンク参照多用のメリットの伝道師となり口説いていきました。
まだ道半ば、そしてどうしても肌に合わない方には無理強いしないというなかではありますが、今では私の周囲のほとんどはすっかり多用派人材集団と化しました。
これにより無理と思われたいくつもの短期集中型高難度PJも満足な結果で乗り切ってきました。
他部門からは「何故この期間でそれを実現できるのか?」、「どうやって業務を進めているのか?」、「考え方や資料の作り方を教えてくれ」といった声も多数頂戴し、この点においては私がマネジメントするチームメンバーたちも誇らしげにしてくれています。
伝えてよかった。
Excelリンク参照機能が、私とメンバーと他部門の多くの人たちをリンクしてくれたんだ。
私は帰社後のバルコニーでの晩酌で、夜景を見ながらしみじみ思いふけたのでした。
以上が今回私がお伝えしたかったExcelリンク参照による作業効率化です。
ここまで書いてなんですが、リンク参照多用はNGでも全然良いと思います(笑)。
これは完全に好み。どちらにもメリット・デメリットはありますので正解なんてものはございません。
私もファイルを連携する相手に合わせてファイルの作り方を変えています(自分の手元にはリンクを残したファイルをのこしていますが)。
私が今回皆様へお伝えしたかったのはあくまで、「リンク参照を多用するならこうする。リンク参照を多用する人も極力使わない人も、どんな企業にもどんな部門にも初~上級者にも存在する。そのためどちらが正しいということは無いので、無理強いはせず、不要な知識取得に焦らず、機能を熟知したうえで時と場合に応じて取捨選択して欲しい」ということでした。
もしよろしければ、皆様の会社や部署ではどのように捉えられているか?私はこう思う。といったご意見・ご共有を頂けると大変嬉しいです。
自身が経験していない場所ではどのようになっているのか。
色々学ばせていただきたく存じます。